平成29年度(第67回)税理士試験出題のポイントが公表されました。
このうち、相続税法について、実務で使う場面などを織り交ぜた所感を書いてみたいと思います。
(試験問題は把握していません。)
理論問題について
問1について
延納と物納について出題されたようです。
延納は、受験上は毎年Aランク理論で挙げられながら、本試験では出ないという(笑)印象が強いです。今年は本当に出たのですね。
実務上は、後述の事業承継税制とは違い、相続人さんたちから人気があるというか、需要がある印象です。
お金をお持ちなのに、延納したいという方も時々(笑)
筆者がよくお会いしたのは、首都圏でいえば練馬区や東京都多摩東部、千葉県の東京都寄りの市で土地だけやたらお持ちの方。
このような方々は、ほぼ物納で、しかも物納候補の土地にはアパートは建てずに駐車場程度にとどめて置くという準備の良さ。
この「準備」が、物納を実現するために必要で、相続開始してから物納の準備を始めても、申告期限に間に合わないことが殆どです。
なぜ準備が必要かは、試験には出てこない論点だと思いますので、物納は事前準備命!と覚えて頂ければ幸いです。
問2について
事業承継税制について出題されたようです。
最近では雇用継続要件の緩和などの改正もありましたし、時事ネタといいますか、タイムリーな感じがします。
実務家としては、細かい適用要件は常時100%頭の中に存在していません。
そのため、今すぐ試験問題の解答をせよ、と言われると、果たして合格答案が書けるのかどうか怪しいところです。
実務的には、法人税申告書の別表二(社長が握りっぱなしなのか否か)、会社の貸借対照表(=株価が高そうか)、そして目の前の社長さんの年齢や頭の中(=事業承継への関心度)を探りつつ、概要を提案させてもらって興味がありそうなら細かい提案をしているところです。
実務上の最大のネックは、納税猶予という制度そのものの性質です。
納税猶予は、あくまで納税の先送りです。
後継経営者さんとしては、納税猶予が継続できなくなり、猶予していた相続税が突然降りかかるリスクを恐れます。
ただでさえ、営業上の競争、雇用の確保、金融機関対応、背中にのしかかる連帯保証などを抱えるなかで、更に納税猶予という時限爆弾のようなものを背負いこむのは、想像しただけでも辛いでしょう。
ですので、こういう方法もありますよ、的なスタンスで、他の対策なども含めた選択肢の一つとしておススメしています。
計算問題について
計算問題のポイントは次の通り、ということでした。
(1) 宅地の評価を理解しているかどうか。
(2) 農地の評価を理解しているかどうか。
(3) 取引相場のない株式の評価について、類似業種比準価額、純資産価額の評価方法を理解しているかどうか。
(4) 上場株式の評価方法を理解しているかどうか。
(5) 小規模宅地の特例の適用要件等を理解しているかどうか。
(6) 相続財産に含まれる財産の範囲を理解しているかどうか。
(7) みなし相続財産である生命保険金及びその権利の評価を理解しているかどうか。
(8) 生前贈与された財産の相続税の課税価格に加算される財産の範囲と贈与税額控除の控除対象を理解しているかどうか。
(9) 債務及び葬式費用について、それぞれの控除範囲を理解しているかどうか。
(10) 法定相続人の数、法定相続分を理解しているかどうか。
(11) 相続税の障害者控除について理解しているかどうか。
(12) 相続税額の加算の対象となる者の範囲について理解しているかどうか。
ポイントだけざっと見れば、精算課税贈与や相似相続控除が見当たらないなぁと感じるぐらいで、かなり網羅されている印象です。
個々の問題のレベルはよく分かりませんが、これだけ範囲が広いと、各問のレベルは比較的易しかったのかも?と勝手に推測。
実務的には、試験問題に載っているデータ(=財産の情報)を自分で集める必要があるのが最大のポイントです。
ほとんどの資料は、税理士ではなくお客様である相続人さんに集めていただくため、段取りよく集める方法の説明に工夫が要ります。
筆者の場合は、資料収集リストを収集先別にまとめたものを用意しています。
首尾よく資料を集めたとしても
・全般的に、民法の知識が必要
・相続人の確定には、戸籍を読み解く知識が必要
・土地の評価は、建築関係を中心とした関連法規の理解が必要
・預金の評価は、残高証明書の取り寄せでは全くダメ
などなど。
試験問題では既に用意されている材料(=財産の情報)が、実務ではまず材料探しから始めて、その材料が使えるのかどうかの吟味をするのが大変です。
材料さえキチンと揃えることができれば、相続税の申告については7割ぐらいは仕事が終わった感じがします。
おわりに
好き勝手に書いたことをお許しください <m(__)m>
出題のポイントを読んでも、現役受験生時代の筆者には、何の参考にも慰めにもならない感じがしました。といいながらも、気になるので毎年読んではいましたが。。
12月には吉報が届きますことを切にお祈りしております。
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【編集後記】
諸事情によりしばらくお休みします。