昨日(平成29年6月9日)、天皇の退位に関する法律が成立しましたが、税理士的に興味深い内容がありましたのでご紹介します。
天皇ご所有の財産は原則相続税が課税される
意外に感じられるかも知れませんが、天皇ご所有の財産は、原則として相続税が課税されます。
ただし、例外として一部の財産は相続税の非課税財産とされています。
税理士試験で相続税法を勉強された方なら、「あ~、そんな規定あったね」的なものです。
筆者も久しぶりに「あ~そんなの有ったよね」と思い出しました。
相続税法第十二条
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 皇室経済法第七条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
皇室経済法第七条
皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。
つまり、天皇ご所有の財産は原則として相続税がかかるけど、「由緒ある物」は相続税が非課税ですよ、ということです。
由緒ある物を調べてみたところ、「三種の神器」と「宮中三殿」が「由緒ある物」のようです。
(宮内庁HP)
ポイントは、相続税「は」非課税とされているということです。
じゃあ、贈与税は??
三種の神器にまさかの贈与税?
ちょっと長いですが、贈与税の非課税についての決まりをざっと見てみましょう。ざっとで良いですよー。
相続税法第二十一条の三
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
一 法人からの贈与により取得した財産
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
四 所得税法第七十八条第三項に規定する特定公益信託で学術に関する顕著な貢献を表彰するものとして、若しくは顕著な価値がある学術に関する研究を奨励するものとして財務大臣の指定するものから交付される金品で財務大臣の指定するもの又は学生若しくは生徒に対する学資の支給を行うことを目的とする特定公益信託から交付される金品
五 条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令で定めるものに基づいて支給される給付金を受ける権利
六 公職選挙法の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し贈与により取得した金銭、物品その他の財産上の利益で同法第百八十九条の規定による報告がなされたもの
相続税と違って、どこにも「皇位とともに皇嗣が受けた物」の記載がありません。
今までは、生前退位が有り得なかったので、贈与税については非課税にする必要がなかったからでしょう。
とはいえ、生前退位により三種の神器をはじめ由緒ある物が承継される行為は、まさに生前贈与。
このままでは、三種の神器に贈与税がかかってしまいます。
さすがのプロ
昨日成立した天皇の退位に関する法律は、正式には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」のようです。
※ご興味のある方は、次のリンクに法律案が掲載されていますので、どうぞ。
法律案を読むと、こんな条文がありました。
(天皇の退位及び皇嗣の即位)
第二条 天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位する。
(贈与税の非課税等)
第七条 第二条の規定により皇位の継承があった場合において皇室経済法第七条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物については、贈与税を課さない。
2 前項の規定により贈与税を課さないこととされた物については、相続税法第十九条第一項の規定は、適用しない。
もう、さすが法律作成のプロ、というほかありません。
ちゃんと、贈与税の魔の手から三種の神器が守られるよう、手を打ってありました。
ちなみに「前項の規定により~」というのは、三種の神器を生前贈与加算の対象にしませんよー、というものです。
生前贈与加算?はてな?という方は、こちらをどうぞ。
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【編集後記】
由緒ある物は贈与税が非課税ですが、その他の財産は生前贈与されないのでしょうか?
ちょっと気になるところです。