決算書資料を見ていて、相続対策は大丈夫かな?と心配になるものがあります。
代表者からの借入金がやたらに多い貸借対照表
代表者からの借入金が多い貸借対照表で、代表者がご年配の方の場合、思わずドキドキします。
次の貸借対照表と内訳書をご覧ください。
代表者からの借入金が7,000万円あります。
見方を変えれば、代表者の財産として、この会社に対する貸付金が7,000万円ある、ということです。
代表者の年齢が65歳以上の場合、相続対策は大丈夫かな?と思ってしまいます。
相続税の試算を行っていて、貸付金の認識が出来ている場合は、外部から口やかましく色々申し上げることは無いのですが、試しにお尋ねしてみると、認識が出来ていない場合が殆どです。
貸付金が7,000万円の場合、相続税率が30%なら2,100万円の相続税がかかります。
代表者個人の立場からすると、一心同体とも言える自分の会社に注ぎ込んだお金ですから、それを財産と言われるのは相当な違和感を感じる方も多いと思います。
しかし、財産なのは間違い無いので、相続税の負担を避けたいなら何かの対策を生前に打たなければなりません。
先ほどの貸借対照表のように純資産がマイナスの場合は、比較的対策がし易いことが多いです。
他にも確認しないといけない事項はありますが、考えられる対策は次の2つです。
具体的な方法は、別の機会に譲るとして、大まかな内容を説明します。
債権放棄
貸付金を放棄します。
放棄することで、代表者の財産はその分減少します。
会社は借入金を返さなくてよくなるため、その分利益になりますが、会社が赤字体質の場合は過去の赤字やその年の赤字と相殺できるので、法人税負担ゼロで相続対策ができることもあります。
デッドエクイティスワップ
貸付金を株式に変換します。
変換することで、代表者の財産は貸付金ではなく、株式になります。
貸付金の評価は額面通りですが、株式の評価は額面通りではなく、一定のルールに基づき行います。
この方法が相続対策になるか否かはケースバイケースなので、実行前には慎重なシミュレーションが必須です。
株主がやたらに多い
株式を多数の親族で保有している場合も頻繁に見かけます。
例えば、次の株主名簿のような場合です。
将来の経営者が長男だとした場合、長男の将来的な株式数は40%(代表者30%、妻5%、長男5%の合計)です。
次のように、親族図を作り株式割合を書き込むと、状況がわかりやすくなります。
株式数(議決権)が40%だと、長男の一存では何も決められないことになります。
少なくとも兄か弟(長男からみれば伯父か叔父)のいずれかに協力してもらわないと、議決権の過半数を握ることができません。
更に、兄や弟に相続が起きた時にはその子供(長男からみれば従兄弟)に株式が承継されています。更に相続が起きれば次の世代へ、というように、株式がどんどんバラバラになっていきます。
このようなことを防ぐためには、何らかの方法で株式の集約を図る必要があります。
方法は様々なものが考えられますが、どの方法をとるにしても、既存の株主の理解を得ながら進めていく必要があること、時間がかかることは共通して言えますので、早め早めの対策が必要になります。
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【編集後記】
今日は随分と沢山の雨が降りました。
例年だとこれだけ雨が降れば葉桜になってもおかしく無いのに、何故か今年は保っています。
ずっと楽しめて嬉しい反面、不思議なことです。