同時死亡の場合の相続税申告はどのように行えば良いか解説いたします。
同時死亡とは
交通事故や住宅火災などで、ご家族のうち2人以上が亡くなった場合に、亡くなった方の死亡時期が分からない場合があります。
この場合、法律により全員同時に亡くなったものと推定します。
このことを、同時死亡(正確には同時死亡の推定)と言います。
例えば、父親Aさんとお子様Cさんが交通事故に遭った場合には、次のように考えます。
・AさんとCさんのどちらが先に亡くなったか分からない・・・同時死亡と推定
・Aさんは現場で亡くなり、Cさんは病院に運ばれたのちに亡くなった・・同時死亡ではない
同時死亡の推定の「推定」とは、確たる証拠がある場合には覆る可能性があることを意味します。
AさんCさんが同時死亡と推定された場合に、Cさんが後で亡くなった証拠を示すことができれば、法律上、同時死亡ではなくなります。
なお、具体例として交通事故など同じ場所で亡くなる場合を挙げましたが、同時死亡の推定は場所を問いません。離れた場所でどちらが先に亡くなったか分からない場合も、同時死亡の推定が働きます。
同時死亡か否かで、相続人が大きく変わることがありますので、とても重要なポイントです。
どう変わるかは、これより述べていきます。
同時死亡の場合の相続人
同時死亡となった場合の相続人は、次のように考えます。
次の親族図では、夫Aの相続人は妻B、母Dです。
夫Aと子供Cが同時死亡だった場合、子供Cは夫Aの相続人になりません。
同時死亡の場合は、同時死亡者は互いに相続人にならない特別ルールがあるためです。
妻Bは配偶者なので常に相続人ですが、夫Aには相続人としての子供が存在しないことになるので、親である母Dが相続人になります。
(相続人の考え方は、以下のブログをお読みください。)
同時死亡でない場合の相続人
同時死亡でない場合の相続人は、次の様に考えます。
先程と同じ親族図ですが、先に夫Aが亡くなり、間も無く子供Cが亡くなった(同時死亡ではないもの)とします。
そうすると、夫Aの相続人は妻Bのみとなります。
夫Aが亡くなった時点では、子供Cは存命です。したがって、夫Aの財産は妻Bと子供Cが相続します。
間も無く子供Cが亡くなると、子供Cには配偶者や子供(夫から見て孫)がいませんので、子供Cが相続した夫Aの財産は、親である妻Bが相続します。
つまり、結果として夫Aの財産は、全て妻Bが相続することになります。
相続税申告は誰が行うか?
それでは、相続税申告は、誰が行えば良いのでしょうか。
(夫Aは相応の財産があり、子供Cは財産がないものとします。)
同時死亡の場合
先程の同時死亡の事例は、被相続人:夫A、相続人:妻B及び母Dでした。
この場合は、夫Aの財産について、妻B及び母Dが相続税申告を行います。
同時死亡でない場合
先程の同時死亡でない事例は、夫Aの相続財産について妻Bと子供Cが相続税の申告を行いますが、子供Cはその後死亡しているため、結果として妻Bのみが相続税の申告を行います。
また、子供Cは夫Aの財産を相続しないのが通常ですから、子供Cを被相続人とした相続税の申告は必要ありません。
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【編集後記】
同時死亡は滅多にあることでは無いですが、もし起きた場合は相続関係が相当複雑になる可能性があるので、弁護士や司法書士などの専門家への相談をお勧めします。