平成29年度税制改正大綱が昨日発表されました。
税制改正の目玉として、配偶者控除の改正などが話題になっていますし、当ブログでも近日中に触れたいと思いますが、それらを差し置いて超特急の対応が必要な改正が盛り込まれていました。
目次
取引相場のない株式の評価方法の変更
取引相場のない株式(非上場会社の株式)の評価方法が変更されます。(平成29年度税制改正大綱の61頁)
現在の評価方法は、類似業種比準方式(上場会社と評価会社を比較して評価する方式)と純資産価額方式(評価会社の一株当たり純資産価額を算定する方式)の組み合わせにより行っています。
平成29年度税制改正に伴い変更されるのは、このうち類似業種比準方式についてです。
類似業種比準方式…計算方法の変更
類似業種比準方式は、同業種の上場会社と評価会社とを比較して評価する方式です。
同業種の上場会社と評価会社とを3つの指標(一株あたり配当、一株あたり利益、一株あたり純資産)で比較して評価を行います。
詳細な評価方法は省略しますが、ポイントとして、3つの指標が同業種の上場会社を上回れば株価は高く、下回れば株価が低くなると押さえて頂ければ大丈夫です。
3つの指標ですが、現在のルールでは配当20%、利益60%、純資産20%の比率、つまり利益を重視して評価しています。
平成29年度税制改正では、利益重視を改め、全て3分の1の比率、つまり全ての指標を等しく考慮する方法に変更されます。
改正がどの程度影響するのか検討するため、サンプルを以下の2パターン用意しました。
試算例1 成長中の企業
サンプル一つ目は、純資産の厚みは上場会社に及ばないものの、収益力に強みのある会社で、上場会社を上回る利益を計上している会社です。
(単位:円)
現在のルールでは、株価は1,064円ですが、平成29年以降は840円に下がることが見込まれます。
税制改正後は、利益があまり重視されなくなるため、株価が下がることになります。
試算例2 古くから続く老舗
サンプル二つ目は、長年安定した業績を上げているため純資産の蓄積が厚い会社です。
(単位:円)
現在のルールでは、株価は1,120円ですが、平成29年以降は1,400円に上がることが見込まれます。
税制改正後は、純資産により重きを置いて評価することになるため、純資産の蓄積が厚い会社は、平成29年以降は株価が上昇することが見込まれます。
類似業種比準方式…その他変更事項(読み飛ばし可)
類似業種比準方式については、その他の変更項目として次の3点が挙がっていますが、詳細不明のため現時点では対策不能です。こういう改正がされるんだ程度に抑えておけば十分です。
(1) 上場会社の株価に2年平均を加える
現在は、上場会社の株価の、その月の平均、前月平均、前々月平均、前年平均の4つのうち一番低い株価を採用しています。
2年平均を加えると、株価が上昇トレンドの時は低い株価が織り込まれやすくなるので、納税者有利です。
(2) 上場会社の配当、利益、純資産を連結決算ベースに変更
現在は単体決算ベースです。
変更に伴う増減は業種によりけりでしょうから、有利不利は一概に論じられませんが、評価会社は単体決算ベースなので、比較の天秤が異なる改正で本当に良いか疑問です。
(3) 評価会社の規模区分のうち、大会社及び中会社の適用範囲を拡大
会社規模が大きいほど、株価に占める類似業種比準方式の割合が大きくなり、純資産方式の割合が小さくなります。
ケースバイケースなので、有利不利は一概に論じられませんが、毎年利益を計上し、純資産も厚い優良会社にとっては、恐らく有利に働く改正と考えられます。
平成29年1月1日以降の相続、贈与から変更
平成29年度税制改正大綱によると、これらの改正の適用時期は、平成29年1月1日とのことです。あと3週間ほどしかありません。
税制改正の適用時期は、通常は4月1日から、来年から、などとされることが多く、慌てて対応する必要が無いことが殆どですが、類似業種比準方式の改正は、大綱に適用時期が明記されている以上、大急ぎで対応する必要があります。
株式の贈与を予定している方は、平成29年以降に贈与するより、平成28年中に贈与した方が贈与税の負担を抑えられる可能性があります。
まずは年内に株価試算を行おう!
まずは、現在のルールで株価計算を行い、更に新ルールでも試算を行い、影響額がどの程度になるか試算をしてみましょう。
株価計算は、顧問税理士に依頼してみましょう。もちろん当事務所でも、株価計算のみお手伝いさせて頂くことが可能です。
気になる方は、1日も早く動くことが大事です。