生産緑地地区が抱える平成34年問題

突然ですが、生産緑地地区をご存知でしょうか?

住宅地の中にポツンと広い農地や緑地があると、写真のような立て札が立っていることがあります。これが生産緑地地区です。

今回は、生産緑地地区が抱える問題についてお伝えいたします。

生産緑地地区とは?

生産緑地地区とは、市街化区域内の農地を保全することで、良好な都市環境を形成するために定められた区域のことです。

生産緑地地区は、三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)の特定の市における市街化区域に定められています。また地積の制限があり、500㎡以上の農地について定められます。

特定の市とは、首都圏を例にあげると次の通りです。

・東京都 23区及び全ての市

・神奈川県 全ての市

・千葉県 次の括弧書きの市以外の市

(銚子市、館山市、茂原市、東金市、旭市、勝浦市、鴨川市、八街市、南房総市、匝瑳市、香取市、山武市、いすみ市、大網白里市)

・埼玉県 次の括弧書きの市以外の市

(秩父市、本庄市、深谷市、白岡市)

・茨城県 龍ヶ崎市、常総市、取手市、坂東市、牛久市、守谷市、つくばみらい市

※栃木県と群馬県は特定の市がありません。

生産緑地地区のメリット

生産緑地地区として定められると、税金面で大きなメリットがあります。

固定資産税及び都市計画税が軽減される

市街化区域内にある農地は、本来ならば宅地と同様の課税がされるのが原則ですが、生産緑地地区として定められた農地は、市街化調整区域内の農地と同程度の課税です。一言で言えば激安になります。

不動産取得税及び登録免許税が軽減される

不動産取得税や登録免許税は、固定資産税評価額(=固定資産税を課税するために決められた評価額)を元に決まります。

固定資産税が軽減されるということは、固定資産税評価額が軽減されるということで、不動産取得税や登録免許税も自動的に軽減されることになります。

こちらも、驚くほどの激安価格になります。

相続税の財産評価が軽減される

生産緑地地区として定められた農地は、本来の評価額から5%引きになります。

このメリットはあまり大したことがないかも。

相続税の納税猶予が使える

このメリットは、先ほどの評価額5%を補ってあまりあるメリットかもしれません。

相続税の納税猶予とは、ざっくり言いますと、相続税の総額のうち生産緑地に係る分の納税を将来に先送りすることができる制度のことです。

次の相続まで農業を続けないといけないなど、条件はちょっと厳しいのですが、市街化区域にある農地は相続税の財産評価額が高くなりやすく、相続税の額もかなりの額になります。

これを先送りできるのは非常に大きいです。

生産緑地地区が解除されるときは?

良いことづくめの生産緑地地区のように見えますが、デメリットももちろんあります。

生産緑地地区は、農地を維持し続けるのが目的なので、アパートを立てたりすることはできません。あくまで農地として利用しなければなりません。

生産緑地地区としての制約が煩わしい場合は、生産緑地地区の解除がされれば良いのですが、この解除、そんなに簡単ではありません。

解除をしたい場合は、市に農地の買取の申し出を行う必要があります。この申し出は、いつでも自由に、というわけにはいかず、次のいずれかの理由がある時に限り解除をすることができます。買取の申し出が却下された場合は、生産緑地の指定が解除となります。

・生産緑地指定から30年経過

・農地の主たる事業者が死亡か、病気や怪我などで営農できないとき

更に、解除されたときは、先ほど述べた生産緑地のメリットを全て放棄することになります。

固定資産税は宅地並みの課税をされることになりますし、相続税の納税猶予はその時点で取りやめとなります。

納税猶予が取りやめになった場合は、本来支払うべき相続税に加え、相続税の申告期限から生産緑地の解除までの期間に掛かる利子税(=利息のような税金)を支払う必要があります。

そのため、簡単に生産緑地指定の解除をするわけにはいかないのです。

生産緑地地区の平成34年問題(2022年問題)について

いよいよ本題です。

生産緑地地区の平成34年問題(2022年問題)とは何でしょうか?

生産緑地の制度は、平成4年(1992年)にできました。この制度が出来た時、農地のオーナーの殆どの方たちは、税金メリットの大きさ故に、生産緑地指定の申し入れを行ったそうです。

それから30年、平成34年(2022年)になると、生産緑地の解除をしたいオーナーは、市に買取の申し出を行うことができるようになるため、申し出を行うはずです。

市は土地を買い取るだけの予算がないので、その時点で生産緑地の解除がされます。

生産緑地の解除がされると、生産緑地としての縛りがなくなりますので、アパートを建てるのも自由、売却するのも自由、といった具合になります。

ただでさえ、相続対策としてのアパート建築が流行るご時世のなか、更に宅地が供給されることになると、土地の供給過剰か、アパートの供給過剰が生じることになります。

これが、生産緑地の平成34年問題(2022年問題)です。

まとめ

生産緑地制度が出来て30年が経つと、生産緑地が流動化する(=宅地として供給される)問題点があることについて述べさせていただきました。

生産緑地制度については、平成29年5月12日に生産緑地法の改正がなされ、生産緑地内に農家カフェなどを建てても良いこととなったり、面積要件が500㎡→300㎡になるなど、農地として維持してほしい、という政府の意図が感じられる内容になっています。

生産緑地のままでいくか、宅地転用するかはオーナーの判断になりますが、あと4年ちょっとでその判断を迫られることになりますので、判断のための検討を今からでも進めておくことが大事になります。

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【編集後記】

日中、秋葉原駅をうろついてたら、号外でーすとの掛け声と共に渡された新聞紙。

何事かと思ったら、日本ダービーの枠順が決まったとのこと(^_^;)

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