役員の社会保険料削減手法について、今まで次のような記事を書きました。
今回は、税務面で気をつけた方がよいポイントを書きたいと思います。
事前に届出しないと経費にならない
これまで触れてきた社会保険料削減手法は、役員に賞与を支払うことで社会保険料の削減を狙うものでした。
社会保険はそれで良いとしても、税務上は、役員へ賞与を
・いつ
・いくら
支払うのか、事前に決めた上で、税務署へ届出をする必要があります。
事前に決めるとは、通常は定時株主総会で決めます(取締役会などで決める会社もあります)。
また、税務署への届出は、次のうち何れか早い日までに提出する必要があります。
・決めた日(定時株主総会などの開催日)から1ヶ月以内
・事業年度開始の日から4ヶ月以内
このように、ちょっと面倒な手続きを踏まえて支払う役員への賞与のことを「事前確定届出給与」と言います。
(言葉を覚える必要はありません。役員への賞与は事前準備が必要だとの認識で十分です。)
なお、届出書の書き方については説明を省略しますが、用紙はこちらにあります。
届け出た通りに支払う必要がある
役員への賞与は、事前に届出を行うのも大事ですが、届け出た通りに支払うことはもっと大事です。
例えば、届出書に「12月15日に1,000万円支払う」と書いてあるなら、その通りに支払う必要があります。
1月に1,000万円を支払ったり、12月15日に600万円+1月に400万円を支払った場合は、全て税務上の経費として認められません。
ただし、毎月の役員報酬まで認められなくなる、というわけではありませんので、念のため。
支給日が1日でもズレたらダメなのか?
余談ですが、支給日が1日でもズレたら経費として認められなくなるのでしょうか?
あくまで筆者個人の見解ですが、多少のズレは許されるのではないかと思います。
というのも、法人税法では
所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与
と定めています。決して「所定の日に」とは書いていません。
「時期」については法人税法において定義がありませんので、一般的な日本語の解釈によることになりますが、時期、といえば、ピンポイントで特定の日を指すのではなく、ある程度幅を持たせた概念ではないでしょうか。
そうすると、支給日が数日ズレたところで、「所定の時期」に支給したことに変わりありませんので、セーフではないかと。
もちろん、届出通りの日に支給するに越したことはありませんよ。
役員個人の年収が一時的に変動する
役員個人の立場でみると、賞与のタイミングによっては、一時的に年収が変動することがあります。
例えば、3月決算の会社で、定時株主総会は5月、役員の任期は6月から翌年5月までとします。
通常は、毎月100万円支給していたとします。
月10万円、賞与1,080万円支給に変更します。
5月の定時株主総会で、6月以降の毎月の役員報酬を10万円、賞与1,080万円を12月に支給する決議をしたとします。
すると・・・
支給の方法を変更した年については、役員個人の年収は1,650万円(100万円×5月+10万円×7月+1,080万円)となります。
役員賞与を翌年1月にしても良いですが、その場合は年収570万円になります。
役員個人の年収の変動は、翌年の住民税にも影響しますし、もし個人でローンを組む予定がある場合は審査に影響があるかも知れません。
役員個人の年収が一時的に変動することの影響は、慎重に考慮する必要があります。
おわりに
全3回シリーズ?でお伝えした役員の社会保険料削減手法ですが、いかに筆者が勧めたくないと思っているかがバレてしまった気がします(笑)
賞与を支払う以外にも、給与の一部を会社契約・個人受け取りの終身保険に置き換えることで社会保険料を節約する手法も聞きますが、厚生労働省が100%認めている手法ではないとの話もあります。
いろんなコンサルさんが売り込んでくると思いますが、どうか判断は慎重に。
少なくとも、答えを急がせたり、限定○名だからお早めに!ときたら、ハナから疑ってかかった方が良いのではないかと。
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【編集後記】
生まれた初めて、お客様からバースデーケーキを頂きました。
しかも、大好物のチーズケーキでした!
ありがたいことです(^_^)