年末調整において、海外に住んでいる親族(国外居住親族)を扶養親族として申告するケースは、海外からの出稼ぎ労働者を雇用している会社などでよく見られます。
この国外居住親族について扶養控除を受けることができる条件が、平成28年度より厳格化されており、扶養控除等申告書に証明書類を添付して勤務先に提出しなければなりません。
この証明書類、会社としてどの程度チェックを行えばよいのでしょうか。
証明書類とは
次の2つです
親族関係書類
従業員と国外居住親族が親族関係にあることを証明する書類です。具体的には次の(1)、(2)のうちいずれかです。※和訳の添付も必要
(1) 国か地方公共団体が発行する書類(例.戸籍の附票)と国外居住親族のパスポートのコピー
(2) 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の住所、氏名、生年月日が分かるもの)
→例えば、戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書などです。
送金関係書類
国外居住親族の生活費、教育費に充てるための送金を必要の都度行ったことを示す書類です。具体的には次のものです。※和訳の添付も必要
(1) 金融機関が発行する外国送金明細
→ハンドキャリーのように書類が残らない場合は、国外居住親族について扶養控除を受けることができません。
(2) クレジットカードの明細
→国外居住親族が生活費等の支払いに使ったカードの明細で、従業員が支払ったことが分かるものです。
証明書類のチェックはどの程度行えば良いのか
証明書類のうち、親族関係書類は和訳さえあれば事実関係の確認は比較的容易です。
よく分からないのが送金関係書類です。私が考えた疑問は次の2点です。
(1) 送金を必要の都度行ったものとあるが、必要の都度とはどの程度なのか。
(2) 送金関係書類は、同一生計であることを証明する書類だが、同一生計であることをチェックするためには、その送金金額の大小のチェックをしなければならないのか。仮にチェックするなら、それぞれの外国毎の物価水準などを考慮しなければならないのか。
法律、国税庁の見解を確認
法律上は、従業員に証明書類の提出を求めているだけで、会社のチェックについては特に定めがありません。
国税庁が発表しているQ&Aによれば、次の3点をチェックすれば良いとのことです。
(こちらの4頁、Q4)
・送金者の氏名がその従業員の氏名になっているか
・送金受領者の氏名が、その国外居住親族の氏名になっているか
・送金日が、控除を受ける年のものか
つまり、同一生計の事実については、会社が判断する必要がありません。また、必要の都度の程度についても、Q&Aによれば特に意識しなくても良さそうです。
会社が行うべきチェックの範囲は、形式的な書類のチェックに留まり、それ以上の判断は不要と考えて差し支えありません。
まとめ
国外居住親族については、法律で求められている書類の提出を従業員に周知し、会社が行うべきチェックは、提出された証明書類の形式的なチェックのみ行えば良いものと考えられます。