採用した従業員が、年内に他の会社で働いていた場合、他の会社分の源泉徴収票を従業員に提出してもらいます。
では、採用した従業員がその年の年末調整を行う前に退職した場合
・当社分の源泉徴収票は、他の会社分も含めるのか?
・提出してもらった「他の会社分の源泉徴収票」はどうするか?
について解説します。
目次
当社分の源泉徴収票は当社分のみ記載
当社から発行する源泉徴収票には、あくまで当社から支給した給与、当社で控除した社会保険料と源泉所得税の額を記載します。
上の図でいうと、②の部分のみ記載すればOKです。
他社分(上の図でいうと①の部分)を含めて書く必要はありません。
根拠は2つあります。
根拠1
根拠の一つ目です。法律をそのまま載せましたが、特に読まなくても大丈夫です。
所得税法 第百九十条 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、第一号に規定するその年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が二千万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合において、同号に掲げる所得税の額の合計額がその年最後に給与等の支払をする時の現況により計算した第二号に掲げる税額に比し過不足があるときは、その超過額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収すべき所得税に充当し、その不足額は、その年最後に給与等の支払をする際徴収してその徴収の日の属する月の翌月十日までに国に納付しなければならない。
一 その年中にその居住者に対し支払うべきことが確定した給与等(その居住者がその年において他の給与等の支払者を経由して他の給与所得者の扶養控除等申告書を提出したことがある場合には、当該他の給与等の支払者がその年中にその居住者に対し支払うべきことが確定した給与等で政令で定めるものを含む。次号において同じ。)につき第百八十三条第一項(源泉徴収義務)の規定により徴収された又は徴収されるべき所得税の額の合計額
上記の条文をザクッと言えば
「年末調整の計算をするときは、前職分の給与も含めてね」
ということを言っています。
根拠2
こちらの根拠の方が分かり易いです。
(出典 国税庁HP ホーム>税について調べる>パンフレット・手引き>平成28年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引 7頁 赤アンダーラインは筆者による)
年末調整を行なった場合は、源泉徴収票の摘要欄に前職情報を記載するよう指示がありますね。
因みに、源泉徴収票の摘要欄はこちらのことです。
他社分の源泉徴収票が必要な理由は、年末調整に必要だから
根拠を2つ確認しましたが、何れも、年末調整を行う場合に前職情報が必要なことが分かります。
逆に言えば、中途退職により年末調整を行わない場合は、前職情報(=他の会社分の源泉徴収票)は不要、もっと言えば、従業員に提出してもらう必要がなかったもの、ということです。
提出してもらった「他の会社の源泉徴収票」は従業員へ返却する
入社時に提出してもらった「他の会社の源泉徴収票」は、退職時に従業員へ忘れずに返却しましょう。
入社時に提出してもらったのは、何も入社に際しての義務なのではなく、年末調整の際に必要だから今のうちに預かっておこう、という理由からです。
退職によって年末調整を行わなくなったわけですから、「他の会社の源泉徴収票」を提出してもらう理由が消滅したことになります。
したがって、退職時に従業員へ必ず返却するようにしましょう。
実務上のお話
これまで法律や手引きに沿って説明してきましたが、実務上は中途退職なのに前職情報を載せている源泉徴収票を時々見かけます。
最初の図でいえば、当社の源泉徴収票を発行するときに①と②の合計金額を記載し、摘要欄に①の情報を記載している、というものです。
厳密にはルール通りの源泉徴収票ではないのでしょうが、実務上は特に問題ないので、再作成などせずに年末調整を行なっています。
(あくまで筆者の経験上のお話ですが)
まとめ
入社した従業員がその年において前職がある場合の源泉徴収票の取り扱いについて解説いたしました。
基本的には当社分のみの情報を記載した源泉徴収票を作成し、前職の源泉徴収票は忘れずに従業員へお返しすればOKです。
||||||||||||||||||||||||||||||||
【編集後記】
事務所HPにコソッと無料相談の案内を設けてみました。
税金のことでお困りの方、ぜひご利用ください。