法定相続人に未成年の方か、障害をお持ちの方がいる場合は、遺産分割協議を行うにあたってぜひ気に留めておきたい税務上のポイントがあります。
未成年者と障害者は相続税の負担が軽減される
法定相続人のうち、未成年の方と障害をお持ちの方は、相続税の負担が軽減されます。
軽減される金額は次の通りです。
・未成年の方=(20歳ー相続開始時の年齢)×10万円
・障害者の方=(85歳ー相続開始時の年齢)×10万円
・特別障害者の方=(85歳ー相続開始時の年齢)×20万円
これらの特典のことを「未成年者控除」「障害者控除」と読んでいます。
※障害者の方については、次の記事に詳しく書いています。
未成年者、障害者以外の相続人が恩恵を受けることも
先ほどの軽減される金額、未成年の方や障害をお持ちの方以外の相続人が恩恵を受けることもあります。
それは、未成年者または障害者本人が、軽減される金額を使いきれなかったときです。
例えば
・未成年の相続人有り
・年齢は10歳
・相続税が軽減される金額は100万円 ・・・(20歳ー10歳)×10万円
・未成年の相続人について、軽減される前の相続税額は30万円
という場合
・軽減される前の相続税額30万円 < 軽減される金額100万円
なので、未成年の相続人は相続税がかかりません。あーよかったね!
・・・では終わりません。
軽減される金額100万円のうち、使いきれていない金額が70万円(=100万円ー30万円)ありますね。
この使いきれなかった金額は、未成年者又は障害者の扶養義務者である相続人が使う(相続税から引く)ことができます。
扶養義務者とは、未成年者又は障害者の
・配偶者
・直系血族(親とか子供とか)
・兄弟姉妹
です。
扶養義務者は、実際に扶養しているかどうかは一切関係なく、続柄のみで決まります。
扶養義務者が複数いる場合は、相続税の軽減を受ける方を協議で(好きなように)決めることができます。
軽減を受けるために絶対に外せない条件
軽減を受けるためには、絶対に外せない条件があります。
それは
未成年の方または障害をお持ちの方が、相続または遺贈により財産を取得すること
です。
極端に言えば、未成年者に遺産分割するつもりがなくても、未成年者の扶養義務者たる相続人が相続税の軽減を受けるために、未成年者にごくわずかな遺産を分割する方法が考えられます。
なお、相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合でも、相続時精算課税制度により生前贈与を受けている場合には、「相続又は遺贈により財産を取得した」と考えてOKです。
遺言書がある場合の対応
遺言書が遺されていて、遺言書通りだと未成年の方や障害をお持ちの方の相続分がなかった場合でも、相続税の軽減を受けることができます。
相続人全員のもと、遺産分割協議を行えば良いのです。
遺言書の内容を最大限尊重しつつ、未成年の方や障害をお持ちの方に遺産を相続して頂ければ、相続税の軽減を受けることができます。
※遺産分割協議についての参考記事はこちらです。
まとめ
・相続人のうち、未成年の方や障害をお持ちの方は相続税が軽減される
・扶養義務者も相続税が軽減される場合がある
・相続税の軽減を受けるためには、未成年の方や障害をお持ちの方が遺産を相続する(又は遺贈される)必要がある
ことについて説明いたしました。
ちょっとしたことで、税負担が数百万円も変わることがありますので、遺産分割協議にあたっては是非考慮しておきたいところです。
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【編集後記】
山手線の新型電車をたまたま見かけたら、行先表示板が笹の葉でした。
それを見て、今日が七夕だったことに気づきました(^_^;)