上場株式の配当金を確定申告すると得するか、過去に次のような記事を書きました。
ところが、これまでに書いてきた考え方を根本から覆すルールが有りました。
目次
これまでの考え方
上場株式の配当金を確定申告すると、次の税金などが掛かります。
・所得税
・住民税
・国民健康保険料(地域によっては、国民健康保険税)
その一方で、上場企業の配当金は、ごく一部の大株主を除いて確定申告の義務はありません。
そのため、上場企業の配当金は、申告した方が有利か、申告しない(配当の約20%源泉徴収で済ます)方が有利か検討する必要があります。
この考え方は、税理士業界の間では常識のようなものです。
それどころか税務署側も同じように考えていたようです。
というのも、税務署側から税理士会へ、配当金の申告は国民健康保険料などに影響するので、納税者に損得を安易に伝えないよう伝達されたことがあるからです。
国民健康保険料に影響する仕組み
国民健康保険料は、住民税の申告内容をもとに決定されます。
あれ?所得税の申告じゃないの?と思った方、その疑問ごもっともです。
所得税の確定申告は、あくまで所得税の確定申告。
住民税の確定申告をしているわけではありません。
ところが、所得税の確定申告をした方は、その情報が税務署から市役所へ伝わり、住民税の申告を行ったのと同じような取り扱いになります。
そのため
所得税の確定申告をした方=住民税の申告をしたのと同じ=国民健康保険料に影響
という流れになるわけです。
(重要)所得税の確定申告と住民税の申告を変えることができる
ここからが今日の本題、とても重要なところです。
先ほども書いた通り、今までの常識は
所得税の確定申告内容=住民税の申告内容
でした。これを覆す仕組みがあります。しかも以前から。
それは、所得税の確定申告を行っていても、住民税の申告を別途行うことができる、というものです。
上場株式の配当金を例に、具体的に書きますと
・所得税の確定申告は、申告した方が有利なので確定申告する。
・住民税の申告は、申告すると不利なので配当金の申告はしない。
(配当金の記載を省略した申告書を提出する)
ということができます。
この方法が使えるとなると、これまでの考え方で書いた有利不利の判定方法が根底から覆ることになります。
いいとこ取りができる、ということです。
なぜ今頃知ったのか?
筆者は、なぜ今頃知ったのでしょうか?
それは、税理士業界向けの業界誌(週刊)に掲載されていたからです。
読んだ時は、それはそれは衝撃でした。
これまでの考え方が根底から覆ることもさることながら、それが新しくできるルールではなく、以前から存在したことが衝撃でした。
同業の方なら、この衝撃に共感して貰えると思います。
このルールを当然のものと考えていない市があるらしい
申告する方にとっては朗報と言えますが、ここまでくると仕組みが複雑すぎて、ついてこれない方も相当数いらっしゃるのではと想像します。
(このブログの、ここまでの内容は如何ですか?^_^;)
そして、業界誌の記事によると、この取り扱いは当たり前ではないらしいです。
それは、市町村によっては、対応検討中の市もあるとのこと。既に存在するルールにも関わらず、です。
そのため、住民税の申告を独自に行っても、「?」な対応をされる可能性もあります。
もし住民税の申告をやってみようと思われた方は、お住いの市町村に問い合わせてみると良いと思います。
平成29年度税制改正で明確化される
上記のルールがあまりに知られていないためか、平成29年度(2017年度)税制改正大綱では、このルールが存在することを明確化すると謳われています。
明確化とは、先ほど書いたような、取り扱いが不明確な市町村が無くなる、ということです。
税理士としては、この取り扱いをしっかり頭に入れてアドバイスを行う必要がありますね。
にほんブログ村
||||||||||||||||||||||||||||||||
【編集後記】
本日の記事は、税理士という職業の恐ろしさを改めて認識しました。
その一方で、面白い職業だなと改めて感じました。