相続税の対策としてお馴染みの贈与(生前贈与)。
誤解されているポイントがいくつか有りますので、ご紹介します。
この3つは、実務上本当によく遭遇します。
息子や娘の名前で作った預金だから大丈夫
大丈夫じゃないかもしれません。
法律上の贈与は、財産をあげる側が「あげますよ」、もらう側が「いただきますよ」と意思表示して初めて成立するものです。
どちらかの意思表示が欠けると、贈与は成り立たないのです。
実際には、「いただきますよ」の意思表示が不明なものが殆どでしょう。
例えば、親が子供名義で作った預金通帳にお金を積み立てている行為です。祖父母が孫のために作っても同様です。
この作った通帳を子供や孫が知っていて、自由に使えるなら「いただきますよ」が成立していると言えます。
また子供や孫が分別のつかない年齢なら、法定代理人であるお父さんやお母さんが「いただきますよ」と意思表示すればOKです。
(お父さんやお母さんが、子供に代わって自ら「いただきますよ」という意味ではありません。それは横領になります(・・;))
逆に、子供にナイショで子供名義の通帳を作り、毎年お金を積み立てている場合は、積み立てている時点では贈与にならず、そのお父さん又はお母さんの預金です。これを「名義預金」と言います。
この場合、子供が大きくなった時に通帳を子供に渡した時点が、贈与があった時になります。
仮に毎年50万円を22年間(合計1,100万円)積み立て、社会人になって初めて子供に通帳とハンコを渡したとしたら、子供に1,100万円の贈与を行ったものとして、恐ろしい額の贈与税が子供に課せられます。
子供や孫に贈与するなら、次のポイントが大事です。
・物心のつかない年なら法定代理人である父や母が同意した旨を記した贈与契約書を必ず作る。
・物心のついた年なら、通帳の存在をキチンと認識させる。もちろん贈与契約書は必ず作る。
毎年同じ金額で贈与したら連年贈与だから危険
殆どの場合、危険でも何でもありません。
連年贈与とは、例えば年100万円の贈与を5年間行った場合に、「100万円の贈与を5年間受ける権利」を一時に贈与されたものとする考え方です。
仮に、あげる側の心積もりは計画的な贈与だったとしても、贈与契約書に「500万円を5年分割して渡します」と書いていたり、口約束をしていない限り、連年贈与と言われることはまずありません。
もちろん、毎年の贈与金額を微妙に変える必要もありません。
このことは、国税庁のホームページにもズバリ書いてあります。(確認されたい方はこちら→国税庁HP 贈与税がかかる場合)
安心して毎年100万円の贈与を行ってください。
ただし、毎年の贈与契約書の作成は忘れないようにしてください。
贈与税の申告をしておけば、税務署へ贈与アピールできて有効
有効ではありません。贈与の絶対的証拠には決してなりません。あくまで参考程度です。
わざわざ111万円の贈与を行って贈与税の申告を行うと有効だとの情報もあるようですが、都市伝説と言っても良いほどの情報です。
何回もしつこいですが、税務署から見れば参考情報。
贈与税の申告書は、極言すると財産をあげた人が贈与税の申告を行うこともできますので、贈与の意思を示す決定的証拠とは言えないのです。
それより、キチンと贈与を成立させる、成立させた証を贈与契約書として残す方が100倍大事です。
仮に過去の贈与を示す証拠が贈与税の申告書のみで、他の証拠からは贈与が認められない場合、税務署はその贈与税の申告書が事実上無かったことにする可能性すらあります。
この場合、過去に支払った贈与税は返してもらえます。
しかし、贈与の事実が認められないということは、税務署は、贈与財産は贈与した人の財産だと見ていることになります。
贈与した人に相続税がかかるとしたら・・・。考えただけでも恐ろしいですね。
税務署はこれぐらいのことは普通に行います。
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【編集後記】
今日はとても暖かく、(暑がりの私には)ジャケットを着ていると暑くて汗をかくほどでした。