相続税を避けるための生前贈与。そして、それをあざ笑うかのごとく存在する高い壁。それが生前贈与加算です。仕組みをよく理解すれば、高い壁もうまく避けることが出来るかも?
目次
生前贈与加算の仕組み
なぜ「生前贈与」が行われるのか理解した上で、「生前贈与加算」の仕組みを理解しましょう。
生前贈与は相続税から逃げるために行う
相続税は、亡くなった人(=被相続人)が、亡くなった時点で遺していた財産に掛かるものです。
ということは、生きている間に財産をせっせと妻や子供達にプレゼントしてしまえば、それこそ無一文になってしまえば、相続税から逃げられます。
(実際にそうするかは別問題として)
この、生きている間に財産をせっせとプレゼントする行為を「生前贈与」と言います。
生前贈与は、相続税から逃げるだけのものではありませんが、相続税を意識して行われることが多いのが実態です。
生前贈与加算は相続税からの脱走を防ぐ仕組み
国としては、せっかく相続税という仕組みを用意したのに、生前贈与で逃げられてしまっては、相続税の意味がありません。
そこで、相続税の弱点を補うための仕組みを二つ作りました。
一つは、贈与税。
そしてもう一つは、生前贈与加算。
贈与税については、日本で最も厳しい税金ではないかと思われるほど、高額の税金が掛かります。例えば、親子間で1千万円の贈与した場合の贈与税は177万円です。
生前贈与加算は、生前に贈与された財産にも相続税を掛けますよ、というものです。
あれ?相続税は、被相続人が亡くなった時点で遺していた財産に掛かるものでは?と思われた方。
原則はその通りなのですが、相続税から逃げられないようにするため、例外的に生前に贈与された財産にも相続税を掛けることとしたのです。
ただし、生前贈与財産にも相続税を掛けますよ、といったところで、何十年も遡って相続税を掛けるのは現実的ではありません。
そこで、亡くなった時から起算して過去3年以内(※)の生前贈与に限り、相続税を掛けましょう、ということになりました。
これが、生前贈与加算といわれる制度です。
(※)仮に亡くなった日が平成29年5月10日の場合は、平成26年5月10日以降が「過去3年以内」です。
生前贈与加算にならない贈与とは?
生前贈与加算の対象にならない贈与がいくつかあります。
これらを理解しておけば、うまく相続税を抑えることができるかも??
相続開始前3年前までの贈与
生前贈与加算は、亡くなった時から起算して過去3年以内の生前贈与が対象だと書きました。
当たり前ですが、それより昔の贈与なら、生前贈与加算の対象外ということです。
つまり、生前贈与は一日でも早く行えば行うほど、生前贈与加算から逃げることが出来る可能性が高まる、ということです。
遺産を貰わなかった人
生前贈与加算は、遺産を貰わなかった人は対象外です。
法定相続人でも同様です。
相続税法では、このように書かれています。
相続または遺贈により財産を取得した者が(略)被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては(略)当該贈与により取得した財産の価額を(略)相続税の課税価格とみなし(以下略)
難しい文ですが、要は遺産を貰った人が生前贈与加算するんですよ、ということです。
逆にいえば、遺産を貰っていない人は生前贈与加算なんて要りませんよ、ということになるわけです。
一般的には、遺産を貰う権利がないお孫さんや兄弟姉妹などへの生前贈与が、よく行われています。
ただし、遺言で(法定相続人でない)お孫さんに遺贈することにしている場合は、生前贈与加算の対象者になる可能性がありますから、よく考えて計画的に行いましょう。
ちなみに、相続税における「遺産」は、生命保険金、定期年金を承継したもの、死亡退職金なども含まれます。
一般的にイメージされる遺産より若干幅が広い点に注意が必要です。
20年連れ添った配偶者が受けた贈与
20年以上連れ添った夫婦間で自宅や自宅取得用の資金を贈与した場合は、最高2千万円の非課税枠があります。
非課税の適用を受けた金額については,贈与した時期に関係なく、生前贈与加算の対象外とされています。
教育資金贈与、結婚子育て資金贈与、住宅資金贈与
これらの贈与は、いずれも一定の非課税枠があります。
非課税の適用を受けた金額については、贈与した時期に関係なく、生前贈与加算の対象外とされています。
まとめ
生前贈与加算は、亡くなる日が事前に分からないだけに避けるのが難しい制度と思われがちですが、生前贈与加算の対象にならない贈与もありますので、上手く利用して上手に財産承継を行いたいものです。
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【編集後記】
午前中はSEOの研究、午後は税制の研究と、研究といえば聞こえが良いですがPCや書籍の前で唸っているばかりの一日でした。