手取りベースの役員報酬を支給しようとするときに問題になりそうなこと

株式会社や合同会社などの法人が役員報酬を支払う場合には、毎月同額を支給しないと税務上費用として認められない部分が出てきます。

この「支給」について、今までは額面(社会保険料や所得税などを引く前の)金額でしたが、今後は手取りでもよいことになりました。

つまり、毎月同じ手取り金額であれば、税務上も問題なく費用になるということです。

このルール改正を実行しようとするときに問題になりそうな点を3つ思いつきましたので、対応策も含めて考えてみました。

役員報酬の基本的なルール

役員報酬の基本的なルールをご存知の方は、この章は読み飛ばしてOKです。

役員報酬は、会社法(=株式会社などの会社の諸々の決め事が書かれている法律)により、定時株主総会(※)などで支給額を決めて、決めた通りに支払うルールとなっています。

(※)大企業を中心に例外的な制度を採用している会社もありますが、ここでは省略します。

通常は、定時株主総会(又はその後の取締役会)で新年度の報酬を決定することになります。

例えば、3月決算の会社なら、5月か6月に定時株主総会を開催し、6月(又は7月)以降の報酬を決定する、といった流れです。

これだけなら話は簡単です。

しかし、役員報酬については税務上もルールがあり、このルールに合わない役員報酬は、税務上は費用として認めないよ、という、中々に厳しいルールとなっています。

税務上のルールは3つありますが、ここでは最もメジャーなルールだけ紹介します。

このルールの条件は、次の3つです(全て満たす必要があります)

・事業年度開始後3ヶ月以内に役員報酬を決定する

・事業年度開始〜決定までの役員報酬が同額

・決定後〜事業年度終了までの役員報酬が同額

文章にすると何だかややこしいですね。こんなイメージです。

こんな感じでもOKです。

このルールを、専門用語で「定期同額給与(ていきどうがくきゅうよ)」と読んでいます。

何が変わったの?

今までは、定期同額給与の「同額」は、額面が同額である必要がありました。

しかし、ルール改正により、手取りが同額でも定期同額給与として認めますよ、ということになりました。

外資系企業を中心に手取りベースで報酬を決めている場合があり、それに対応するためのルール改正だそうです。

筆者は外資系企業との縁がありませんので、この辺りの事情は聞きかじった程度の話ですが、日本企業でも海外出向者や、中国子会社の現地スタッフへの支給が手取りベースだったのを見たことがあります。

だからといって、外資系企業しか使えないルールではなく、中小企業でも問題なく使えますので、今後の役員報酬改定のときには手取りベースで決めてOKです。

いつから変わるの?

このルール改正は、2017年(平成29年)4月1日以降の役員報酬決議から適用されます。

中小企業の場合、2月末決算の会社(=4月中旬から下旬にかけて株主総会が開催)が最も早く新ルールが適用されることになります。

もちろん、期中で取締役が増員したなどの理由で臨時に報酬改定決議を行なったとしても、それが2017年4月1日以降に行われた場合は、新ルールの適用OKです。

新ルールを使うときに問題になりそうな点

役員報酬の決議

役員報酬の決定は、定時株主総会などで決めるのですが、決めた内容は議事録として残すのが一般的です。

この議事録に、役員報酬をどう決めたか記載します。

(今までの例)

第○号議案 取締役の役員報酬の改定について

議長は、取締役の報酬について次の通り改定したい旨の説明を行い、議場にはかったところ、全員異議なくこれを承認可決した。

取締役A  月額 金1,000,000円

取締役B  月額 金500,000円

今後、手取りベースで決議を行う場合は、議事録をどのように作れば良いでしょうか?

ネット検索してみましたが、それらしいものがヒットしなかったので、文章を考えてみました。

(手取りベースで決議を行った場合の例)

第○号議案 取締役の役員報酬の改定について

議長は、取締役の報酬について次の通り改定したい旨の説明を行い、議場にはかったところ、全員異議なくこれを承認可決した。

取締役A  月額 金1,000,000円

取締役B  月額 金500,000円

以上の金額は、支給額から社会保険料、源泉所得税及び住民税を控除した残額のことである。

黄マーカーが追加した部分です。

もっと良い表現がありそうですが、要は手取りベースで決議したんですよ、ということが伝われば良いのではないでしょうか。

うっかり報酬総枠をはみ出してしまわないか

ここでの論点は、社長一族で100%の株式を持っている場合は読み飛ばして頂いても問題のない、ややマニアックな論点です。

会社法における役員報酬の決定は

・株主総会で報酬の総枠を決める(又は役員各々の報酬を決める)

・(株主総会で役員各々の報酬を決めない場合)取締役会などで、総枠を超えない範囲で役員各々の報酬を決める

となっています。

株主総会で役員各々の報酬を決める場合は、何の問題もありません。

問題は、株主総会で報酬の総枠を決め、取締役会などで各々の報酬を手取りベースで決める場合に起こりそうです。

というのも、株主総会で定める報酬の総枠は、あくまで額面ベースの筈です。

それを忘れて、取締役会などで手取りベースで決議すると、うっかり報酬の総枠をはみ出してしまうことになりかねません。

したがって、株主総会で報酬の総枠のみ決める会社の場合は、可能な限り総枠を大きく取っておく必要がありそうです。できない場合は、手取りベースの決議の際に額面も計算して、総枠を超えないよう調整するほか無いと考えられます。

額面の計算

ここでは簡単な紹介にとどめますが、手取りを先に決めた場合、額面金額の計算を行う必要があります。

手取り+住民税+源泉所得税+社会保険料=額面金額

の筈ですから、源泉所得税や社会保険料をうまいこと計算してやる必要があります。

まとめ

定期同額給与が手取りベースでもOKになったルール改正について解説いたしました。

外資系企業に限らず、手取りベースで役員報酬を決定したい要望はちょこちょこ見聞きしますので、そのような会社にとっては良い改正といえそうです。

額面金額の計算がちょっと面倒そうですが。。。

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【編集後記】

帰宅中にブログ用の写真を求めて街を彷徨ったのですが、お目当ての場所が見つからず。。

探そうとすると見つからないものです。

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