企業で年末調整を担当されている方にとって、従業員から集めた扶養控除等申告書、保険料控除申告書などの申告書のチェックは面倒な事務作業です。
やっと年末調整を終えたと思っても、後日、税務署から「扶養控除等の控除誤りの是正」というお手紙や、税務調査などで年末調整の間違いを指摘されることもあります。
しかし、間違いの原因は、年末調整担当者の勘違いや誤りもあるでしょうが、そもそも従業員の申告が間違えていることの方が多いのではないでしょうか。
そんな間違いがないよう、色々と気を遣う年末調整ですが、国に対する企業の責任の観点で、どの程度のチェックを行えば企業の責任がないと言えるのでしょうか。
本来は国が行うべきことを企業が代行している
年末調整は、従業員の一年間の所得税を決定する手続きです。
本来ならば国と従業員とで直接行えば良いのですが、それではあまりに国の事務負担が重いので、法律により企業に事務負担を負わせています。
つまり、本来ならば国が行うべき年末調整を、企業が代行していると言えます。
その方が何かと効率が良いですしね。
企業に課せられた義務
そんな企業に課せられた義務は、従業員から法律通りに税金(所得税)を預かって、国に納めることです。
給料にかかる所得税については、誰が行ったとしても同じ答えになる、つまり解釈の余地がない、という前提のもとに、このような制度となっています。
ただし、法律通りに税金を計算するためには、企業が法律通りに税金の計算を行うことに加え、従業員からの申告(扶養控除等申告、保険料控除申告など)に基づく情報が必要です。
年末調整を間違えるとどうなるか
年末調整の間違いが発見された場合は、正しく計算をし直して、従業員から所得税を追加で預かって、税務署に納税することのなります。
この納税だけで済めば良いのですが、更に不納付加算税と呼ばれるペナルティーがつきます。
企業が義務をキチンとこなせなかったことに対してペナルティーがかかる、ということです。
何でもかんでも企業が責任を負うわけではない
先ほど、税金の計算には従業員からの申告に基づく情報が必要、と書きました。
それでは、所得税を追加で払うことになった原因が、従業員からの誤った申告にある場合でも、企業に責任があり、企業にペナルティーを負わされるのでしょうか。
さすがに国も、従業員の申告間違いが原因の場合は、企業にペナルティーを科さないこととしています。従業員の誤りまで企業が責任を持たなくて良い、ということです。
ただし、従業員の申告を丸呑みしていいわけではありません。例えば次のチェックは、法律通りに税金を預かるための企業の義務と言えます。
(1) 特定扶養親族、老人扶養親族など、年齢が適用条件のものについて、申告書に書かれた年齢をチェックして適用可能かチェックすること。
(2) 保険料控除申告において、控除額の計算が正しくされているかチェックすること。
逆に、次のようなチェックは、法律上求められていないと考えられます。
(1) 扶養控除を受ける方の、申告書に記載された所得金額について、証明資料を添付させてチェックすること。
(証明資料の添付は法律上求められていません)
ただし、同じ企業内で働いている扶養親族は、所得金額の把握が簡単にできると思われますので、チェックすべきです。
(2) 保険料控除申告において、国民健康保険料の金額をチェックするために領収証の提出を従業員に求めること
(国民健康保険料については領収証の添付義務がはありません)
つまり、従業員から提出された各種申告書の記載内でチェックできることについてのみ、万全のチェックを行えば良いということです。
まとめ
従業員からの申告書は、申告書上読み取れる範囲内のチェックに留めましょう。