相続税の節税方法として、もはや一般的と化したアパート投資やタワーマンション購入ですが、これらが節税になる理由はご存知ですか?
建物の評価額は購入金額の半額以下
相続税は、財産の評価額に税率を掛けて計算します。
財産の評価額は、財産の種類により様々な出し方があるのですが
【建物については固定資産税評価額で評価する】
とされています。
敢えて専門用語を使いましたが、固定資産税評価額、という用語は覚えなくて大丈夫です。
覚えておきたいルールは次の2つ
【建物の評価額は、購入金額ではない】
【建物の評価額は、新築の場合で購入金額の30%〜50%】
まずはこれだけ押さえましょう。
なお、建物の種類は問いません。
冒頭で挙げたアパート、タワーマンションは勿論、一戸建ての自宅や、テナントビルなど、どんな建物にもこのルールが当てはまります。
購入金額より評価額が低いと言うことは、購入により(税計算上の)評価額が減るということですので、当然相続税も減ります。
どの程度評価額が減るかは、新築か中古か、建物の構造などで左右されます。
新築の場合、木造で購入金額の3割前後、鉄骨鉄筋コンクリート造で4割〜5割前後の評価額になることが多いです。
仮に1億円(評価額4,000万円)のタワーマンションを購入した場合は、財産が6,000万円減ったことになります。
この場合、相続税の税率が30%なら、6,000万円×30%=1,800万円を節税できたことになります。
※建物を賃貸に出すと更に評価額が下がりますが、本稿では省略します。
建物の市場価格は千差万別
これまで書いてきた「評価額」は、あくまで相続税を計算するためだけのものです。
ここで、節税のことは一旦脇に置き、財産の維持、形成という観点で建物の価値(市場価格)を考えてみましょう。
建物は、売却することのできる財産ですし、他人に貸せば家賃収入を生みます。
つまり建物の財産的な価値は、次の2つの価値から成ると言えます。
・売却したらいくらで売れるか
・貸したらいくらの家賃を得られるか
建物の財産的な価値は、当然ながら物件により千差万別です。
時の経過や市場情勢により、購入金額を下回ることもあれば、購入金額を上回る価値になることもあるでしょう。
ただし、自宅(特に一戸建てや永住前提の購入)は別です。
現在の日本においては、自宅の購入は財産形成というよりは、耐久消費財の購入と考えた方が実態に合っています。
財産形成上、一戸建ては勿論、タワマンでも永住前提ならば、建物の市場価値を気にする必要はないでしょう。
相続税の節税額以上に財産を減らしていませんか?
これまで見てきた通り、相続税対策として、建物の購入は非常に有効です。
ですが、ちょっと待ってください。
相続税対策以前に、財産維持、財産形成の観点で、建物の購入を冷静に検討することが必要な筈です。
相続税対策は上手くいったものの、財産が目減りしてしまっては身も蓋もありません。
仮に、購入金額1億円、相続税評価額3千万円、市場価値7千万円の建物を購入した場合は次の通りです。
・相続税の節税額は2,100万円です。
→税計算上の財産価値減少額 1億円ー3千万円=7千万円
→相続税の減少額 7千万円×30%=2,100万円
・財産価値の減少額は3千万円です。
建物の購入により相続税が2,100万円減りましたが、財産価値が3千万円減ってしまったので、差し引き900万円の財産が減少したことになります。
特に、アパート投資による相続税対策を検討している場合、建物の価値=得られる家賃収入を真剣に検討すべきです。
アパート投資はデペロッパーが綺麗な事業計画書を作成して持ち込んでくることが殆どですが、それは参考程度にしておき、ご自身で事業計画を作成するぐらいの気構えが必要です。
まとめ
相続税対策だけに目が行きがちですが、財産維持、財産形成の視点も併せ持ち、広い視点で相続税対策を行いましょう。
にほんブログ村
||||||||||||||||||||||||||||||||
【編集後記】
通勤電車がいつもより混んでいる感じがしたのは、新年度だったからでしょうか。